スクリプト
Chapter 1 オープニング
皆さんこんにちは、ゲーム開発者のためのポッドキャストへようこそ。今日は少しシビアなテーマですが、非常に重要な話をします。インディーゲーム開発の失敗事例データベースについてです。
タカシさん、失敗事例って聞くとちょっと怖くなりますね。でも、失敗から学ぶことって大事ですよね。
その通りです。実は、インディーゲームの80%が5,000ドル未満の収益しか得られないというデータがあるんです。これを知っているかどうかで、開発戦略が大きく変わってきます。
80%が5,000ドル未満!それって日本円で約75万円以下ってことですよね。開発費を考えたら大赤字じゃないですか。
まさにそうなんです。今日は、なぜこれほど多くのゲームが失敗するのか、そしてどうすれば失敗を避けられるのか、具体的なデータと事例をお伝えします。
Chapter 2 衝撃の収益分布:勝者総取り市場
まず、2024年のSteam市場の全体像を見てみましょう。年間で18,626本の新作がリリースされました。前年比でなんと32%増です。
1万8千本以上!毎日50本以上の新作が出てるってことですね。競争が激しそう。
そうなんです。そしてここが重要なポイントなんですが、この中で財務的に持続可能なゲームは、なんと約0.5%しかありません。
0.5%!200本に1本しか持続可能じゃないってことですか?
その通りです。さらに驚くべきことに、生涯収益の中央値はたった1,200ドル、約18万円なんです。上位10%のゲームが収益全体の89%を占めている、完全な「勝者総取り」市場です。
えっと、中央値が1,200ドルってことは、半分以上のゲームはそれ以下の収益しかないってことですよね。厳しすぎます。
そうなんです。2024年を例に取ると、Black Myth Wukongが10億ドル、パルワールドが5億ドルを稼ぎ、この2作だけで他の全インディー合計の8億ドル未満を上回っているんです。
Chapter 3 業界レイオフの嵐:2024年の衝撃
インディーだけじゃなく、大手ゲーム会社も厳しいって聞きましたけど、実際どうなんですか?
実は、2022年から2025年7月までの間に、業界全体で約45,000人がレイオフされています。特に2024年第1四半期は、ゲーム業界史上最悪の四半期で、3ヶ月だけで8,619人が解雇されました。
45,000人!それってかなりの数ですよね。何が原因だったんですか?
主な原因は3つあります。金利上昇による投資資金の引き上げ、コロナ特需の反動、そして開発費の高騰です。特にEmbracer Groupは単独で8,000人をレイオフし、44スタジオを閉鎖、80プロジェクトをキャンセルしました。
Embracerって、Deus ExとかTimeSplittersの会社ですよね?あんな大きな会社でもそんなことになるんですね。
はい。彼らは20億ドルの大型契約が破談になったことが直接の原因でした。これはインディースタジオにも波及して、Embracerから支援を受けていた欧州の数十チームが資金枯渇に陥りました。
Chapter 4 ライブサービスの墓場:93%失敗率の現実
さて、ここからは特に衝撃的なデータをお伝えします。ライブサービスゲーム、いわゆるGaaSの失敗率についてです。
GaaSってGame as a Serviceですよね。フォートナイトみたいな継続課金型のゲーム。儲かるイメージがありますけど。
そう思いますよね。でも実は、ソニーがJim Ryan体制下で進めたGaaSプロジェクト15件のうち、成功したのはHelldivers 2のたった1本だけ。失敗率は93%なんです。
93%が失敗!あのソニーでもそんな状況なんですか?
最も象徴的な失敗事例がConcordです。8年かけて2億ドル以上を投じて開発されましたが、ローンチ後のSteam同時接続数はたった100人。サービス終了まで、わずか14日でした。
14日でサービス終了!8年かけて作ったゲームがたった2週間で終わりって、信じられないです。
結果として、開発スタジオのFirewalkは閉鎖され、210人がレイオフされました。失敗の原因は、ヒーローシューター市場の飽和、差別化要素の欠如、そしてF2P競合に対して有料という価格設定でした。
Chapter 5 インディー失敗のパターン:ポストモーテム分析
大手の失敗はわかりましたけど、インディー開発者はどんな理由で失敗することが多いんですか?
複数のポストモーテム分析から、主要な失敗パターンが見えてきています。最も多いのが「スコープクリープ」で、全体の23%を占めます。
スコープクリープって何ですか?
最初は小さく始めようと思っていたのに、開発中にどんどん機能を追加したくなって、結局リソースが足りなくなること。「あれも入れよう、これも入れよう」が止まらなくなる現象です。
あー、それはわかります。作ってるうちにアイデアが湧いてきますもんね。
もう一つ重要なのが「好きなジャンルの罠」です。あるポストモーテムに印象的な言葉があります。「特定のジャンルを遊ぶのが好きだからといって、そのジャンルを作るのも好きとは限らない」と。
なるほど。RPGが好きだからRPGを作ろう、みたいな発想が危険ってことですね。
その通りです。特にマルチプレイヤーゲームの複雑性を軽視する例が多いです。「一人で複雑なマルチプレイヤーゲームを作るのは大変すぎる」という警告を無視した開発者の失敗談も報告されています。
Chapter 6 資金調達の冬:パブリッシャー撤退の波
資金調達の状況はどうなんですか?最近、クラウドファンディングとか色々ありますよね。
実は、資金調達環境は急速に悪化しています。ベンチャーキャピタルからの投資は「ほぼ消失」と言われるほど。金利上昇で、投資家が安全資産に移行したためです。
えっ、VCからの投資がほぼなくなったんですか?それは厳しいですね。
具体例を挙げると、あのAnother Crab's Treasureを作ったAggro Crabというスタジオ。ソウルライク系のヒット作を出したのに、「次のゲームの資金計画が頓挫した。2024年は容赦なかった」とコメントしています。
ヒット作を出したスタジオでも次の資金が集まらないなんて、本当に厳しい時代ですね。
さらに、著名なインディーパブリッシャーの撤退も相次いでいます。Riot Forgeは完全閉鎖、Humble Gamesは事業縮小、Adult Swim Gamesは事実上解体されました。
Chapter 7 3作品戦略:失敗を前提とした計画
ここまで聞くと絶望的な気持ちになりますけど、何か希望はあるんでしょうか?
はい、ここからが重要です。データが示す「3作品戦略」についてお話しします。実は、初作品で大成功する確率はわずか3.3%なんです。
3.3%!最初のゲームで成功するのは本当に例外的なことなんですね。
しかし、2作目になると売上が平均40%向上、3作目ではさらに24%向上して、累計で74%も上がるんです。経験が蓄積されるからですね。
3作品出せば7割以上売上が上がる可能性があるってことですか。それは希望がありますね。
ただし、重要な問題があります。2作目以降をリリースする開発者は、たった20%しかいないんです。つまり、80%が1作で撤退してしまう。
最初で諦めちゃうんですね。でも、データ的には続けた方がいいってことですよね。
その通りです。成功した開発者の平均作品数は4〜5作品。つまり、最初の失敗を前提に、3作品を出す資金と体力を確保した計画を立てることが重要なんです。
Chapter 8 クロージング
さて、今日のポイントをまとめましょう。インディーゲームの80%は5,000ドル未満の収益、財務的に持続可能なのはわずか0.5%。これが現実です。
でも、3作品戦略で続ける人は成功率が上がるんですよね。
はい。そして、スコープクリープを避ける、ライブサービスには手を出さない、小規模チームで短期開発を心がける。これらがリスク軽減の鍵です。
Concordの14日でサービス終了は衝撃的でしたね。大手でもライブサービスは難しい。
失敗事例を学ぶことは、決してネガティブなことではありません。先人の経験から学び、同じ轍を踏まない。それが賢い開発者の姿勢だと思います。
今日は厳しいデータも多かったですけど、だからこそ準備と戦略が大事だってことがわかりました。リスナーの皆さん、いかがでしたか?
それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。さようなら。
さようなら!