スクリプト
Chapter 1 オープニング
皆さんこんにちは、ゲーム開発者のためのポッドキャストへようこそ。今日は、インディー開発者が見落としがちな巨大市場、MENA(中東・北アフリカ)についてお話しします。
タカシさん、こんにちは。MENAって聞いたことはあるんですけど、正直あまりピンと来ていないんですよね。ゲーム市場として重要なんですか?
実は、MENA市場は2024年に約21億ドル規模で、2029年には28億ドルに成長すると予測されています。そして、世界で最も文化的配慮が重要な市場でもあるんです。
21億ドル!それは大きいですね。でも、文化的配慮って具体的にどういうことですか?
ここが今日のポイントなんですが、規制要件を正確に理解しないと、最大100万AED、日本円で約4000万円の罰金を科される可能性があるんです。
Chapter 2 サウジアラビアとUAEの規制
では、主要な2カ国の規制から見ていきましょう。まずサウジアラビアです。ここは世界で最も厳格な規制を持つ国の一つです。
サウジアラビアって、ゲームに対してそんなに厳しいんですか?
驚くべきことに、2025年には21歳以上という新しい年齢レーティングが追加されました。これでGTA Vが7月に解禁されたんです。以前は完全禁止だったんですよ。
えっ、GTA Vが禁止されてたんですか!それが解禁されたのはすごい変化ですね。
そうなんです。ただし、絶対に禁止されているコンテンツがあります。コーランの引用、預言者の描写、LGBTQ+表現、ギャンブル要素。これらは完全にNGです。
ギャンブルって、ガチャみたいなものも含まれるんですか?
シャリーア法により、カジノやスロットは完全禁止です。ガチャについては国によって解釈が異なりますが、サウジでは非常に厳しく見られます。
UAEはどうなんですか?ドバイとか、観光で人気ですよね。
UAEも厳しいですね。2025年の法改正で、宗教や神への不敬には最大100万AED、約4000万円の罰金が明確化されました。16の必須コンテンツ基準があるんです。
Chapter 3 失敗事例から学ぶ
ここからは、実際に起きた失敗事例を見ていきましょう。これが本当に教訓になります。
有名なゲームでも問題があったんですか?
Call of Duty: Vanguardが2021年に大きな問題を起こしました。Zombiesモードでコーランのページが床に散乱して血で汚れた状態で描写されたんです。
それは...確かに問題ですね。どうなったんですか?
「No Call of Duty」というハッシュタグがアラビア語と英語で拡散され、大規模なボイコット運動に発展しました。Activisionはシーンを削除してアラビア語で謝罪しましたが、批判は続きました。
謝罪したのに批判が続いたんですか?
謝罪がアラビア語のみだったことが問題視されました。公式のメインアカウント、英語でも謝罪すべきだったんです。事前の文化監修があれば完全に回避できた問題でした。
他にも事例はありますか?
Spec Ops: The Lineは、ドバイが自然災害で壊滅した状態を描写したため、UAEで完全禁止されました。2022年時点でもまだ購入できません。ヨルダンやレバノンにも影響が波及しました。
実在の都市を破壊的に描くのは危険なんですね。
Chapter 4 成功事例:Assassin's Creed Mirage
では逆に、大成功した事例を見てみましょう。UbisoftのAssassin's Creed Mirageです。
あ、バグダッドが舞台のやつですよね。あれは評判良かったって聞きました。
その通りです。シリーズ史上最大規模のアラビア語ローカライズが行われました。しかも、単なる翻訳ではなく、文化コンサルタントを3人も起用したんです。
文化コンサルタントって何をするんですか?
ナラティブ、アート、ゲームプレイの全チームと協働して、文化的な正確性を確保します。さらに発音コーチを配置して、英語版でもアラビア語の発音を正確に再現したんですよ。
そこまでやるんですね。結果はどうだったんですか?
イラク人ゲーマーから「自国文化の真の美しさを世界に見せてくれた」と高評価を得ました。「最初からアラビア語で作られたように感じる」という声もありました。
それはすごい褒め言葉ですね。
パリのInstitut du Monde Arabeでミュージアム展示まで行われました。文化発信活動としても認められたんです。
Chapter 5 インディー開発者のための実践ガイド
大手の事例はわかりましたけど、インディー開発者はどうすればいいんでしょう?文化コンサルタントを雇う予算もないですし。
いい質問ですね。実は、MENA専門のローカライズ企業が複数あります。文化監修込みのサービスを提供しているところが多いんです。
費用はどれくらいかかるんですか?
翻訳は1ワードあたり10から15セント程度。文化監修は通常、ローカライズ費用の約20%追加と言われています。1言語あたりの総費用は大規模タイトルで約2万8000ドルですが、インディーならもっと抑えられます。
思ったより手が届く範囲かもしれませんね。
ポイントは、開発初期から文化監修者を参加させることです。後付けで修正すると高コストになります。最初から配慮した設計が大切です。
現代標準アラビア語って、どこでも通じるんですか?
MSA、現代標準アラビア語は22カ国で公用語です。これを基本にして、必要に応じて方言要素を追加するのがベストプラクティスです。AC Mirageもこのアプローチでした。
Chapter 6 国別の規制差異
MENA全体で同じ規制ではないんですよね?国によって違いはあるんですか?
大きく違います。サウジアラビアが最も厳格で、シャリーア法準拠です。UAEも厳しくて、特にドバイの描写には敏感です。カタールは2025年にRobloxを禁止しました。
Robloxが禁止されたんですか!子供向けのゲームなのに?
未成年保護の観点からです。アルジェリアでも同様に禁止されています。一方、レバノンは最も寛容で、多様なコンテンツが許容されています。
同じ中東でもこんなに違うんですね。
重要なのは、一国で問題なくても他国で禁止されるケースがあることです。UAEの判断がヨルダンやレバノンに影響することもあります。全体を見て対応する必要があります。
Chapter 7 チェックリストとクロージング
最後に、MENA市場参入前に確認すべきチェックリストをお伝えしましょう。
お願いします。メモの準備できてます。
まず必須項目。宗教的シンボルや聖典引用の確認と削除。ヌードや性的表現のMENA版修正。LGBTQ+コンテンツの有無確認。ギャンブル要素の完全除去です。
アルコールも確かダメでしたよね?
そうです。アルコールや薬物表現の修正も必要です。あと、実在都市の破壊描写は避けてください。年齢レーティング申請と、RTL、右から左のUI対応も必須です。
推奨される施策は何がありますか?
文化コンサルタントの起用、できれば開発初期から。ネイティブスピーカーによるローカライズ。そして、ラマダンやEidに合わせたイベント企画も効果的です。
今日の話を聞いて、MENA市場は確かに難しそうですけど、きちんと準備すれば大きなチャンスがあるんだなって思いました。
その通りです。7000万人以上のゲーマーがいて、年率6から7%で成長している市場です。文化的配慮は参入障壁でもありますが、それを乗り越えれば競合も少ないブルーオーシャンなんです。
リスナーの皆さん、MENA市場への挑戦、検討してみてはいかがでしょうか。今日もありがとうございました。
ありがとうございました。次回のエピソードでまたお会いしましょう。さようなら。
さようなら!