スクリプト
Chapter 1 オープニング
皆さんこんにちは、ゲームデザイン深掘りポッドキャストへようこそ。今日は「インタラクティブストーリーテリング」、つまりプレイヤーの選択が物語に影響を与える設計手法についてお話しします。
タカシさん、こんにちは。選択で物語が変わるゲームって、最近増えてますよね。Detroit: Become Humanとか、ウォーキング・デッドとか。
そうですね。実は、ここで大事なのは単なる「選択肢」と「プレイヤーエージェンシー」の違いなんです。エージェンシーとは、プレイヤーが物語に本当に影響を与えている感覚のことです。
選択肢があるだけじゃダメってことですか?
その通りです。「選んだ結果、世界が本当に変わった」という体験こそが本質なんですよ。今日はその設計手法を7つのポイントに分けてお伝えします。
Chapter 2 意味のある選択設計
まず最初のコア手法は「意味のある選択設計」です。原則として、選択には「明らかな正解」があってはいけないんです。
正解がないってどういうことですか?ゲームだと普通、良い選択と悪い選択がありますよね。
ここが面白いんですが、良い選択設計では「どちらも価値があり、何かを犠牲にする」というトレードオフ型を使うんです。ウォーキング・デッドの「ダグかカーリーか」という選択が有名ですね。
あー、両方救えなくて一人を選ばなきゃいけないやつですね。あれは本当に悩みました。
他にも「遅延結果型」というパターンがあります。ウィッチャー3のブラッディバロンクエストがそうで、序盤の選択が後半のクエストライン全体に影響するんです。
選んだ時点では結果が分からないってことですか?
そうです。さらにアンダーテールでは「隠れた結果型」が使われています。トリエルを倒すと、その後の対話が永久に変わってしまうんですよ。
Chapter 3 分岐設計の3つの構造
次に、分岐設計の構造について。大きく3つのアプローチがあります。最小分岐、テーマ型分岐、そして結果型分岐です。
3つあるんですね。どう違うんですか?
最小分岐は、一本の主軸に短い枝が生えて、すぐに収束するパターン。Star Wars Jedi: Survivorがそうで、対話選択は感情表現のみで結末は変わりません。
制作コストは低そうですね。
テーマ型分岐は、選択がキャラクターの人格を形成するパターン。Mass EffectのParagonとRenegadeシステムが代表例です。
善人プレイか悪人プレイかで主人公のキャラクターが変わるやつですね。
そして結果型分岐。驚くべきことに、Detroit: Become Humanでは85種類もの潜在的結末があるんです。3人の主人公の選択が掛け算で組み合わさる設計ですね。
85エンディング!?制作大変そう...
インディー向けには、ハイブリッド設計がおすすめです。大半を最小分岐にして、3〜5箇所のキーポイントのみ結果型にすることで、コストと体験のバランスを取れます。
Chapter 4 選択の錯覚と対話システム
ここで重要なのが「選択の錯覚」の使い方です。実は、選択肢が同じ結果に収束しても、許容される場合と問題になる場合があるんです。
許容される場合ってどんな時ですか?
感情表現の選択ですね。「了解した」「仕方ない」「分かった」のように、結果は同じでもキャラクター性を表現できる選択は受け入れられます。
問題になるのは?
Mass Effect 3の結末論争が有名です。数十時間の選択が最終的に3色のエンディングに収束してしまった。プレイヤーは明らかに重要な選択で裏切られると強い不満を持つんです。
あの炎上は覚えてます。対話システムについても教えてください。
対話システムには主に3つのパターンがあります。Mass Effect式の対話ホイール、Disco Elysium式のスキルチェック型、そしてHades式の永続的対話です。
スキルチェック型って何ですか?
Disco Elysiumでは能力値によって対話選択肢が解放されます。さらに面白いのは、スキルが「内なる声」として対話に割り込むんです。例えば、論理スキルが「彼は嘘をついている」と囁き、共感スキルが「彼は怯えている」と言う。
それは面白いですね!スキルがキャラクターの精神そのものになってるんだ。
Chapter 5 状態追跡とマルチエンディング
技術的な話になりますが、選択を追跡するシステムには4つのティアがあります。セッション内フラグ、永続的フラグ、カウンター型変数、クロスセーブ永続化です。
クロスセーブ永続化って、続編にデータが引き継がれるやつですか?
その通りです。Mass Effectトリロジーがまさにそれですね。ただ、コスト管理の原則として、80%の対話はセッション内フラグに留め、15%を永続的、5%のみを複雑な追跡にすることが推奨されます。
なるほど、全部を複雑にする必要はないんですね。マルチエンディングの設計はどうすればいいですか?
3つのパターンがあります。選択が数値として累積する「フラグ集約型」、終盤の2〜3の選択で結末が決まる「分岐点型」、そして複数のサブストーリーが組み合わさる「並行トラック型」です。
インディーにおすすめなのはどれですか?
分岐点型がおすすめです。ウィッチャー3のように終盤5つの選択でシリの運命が決まるパターンですね。さらにエピローグでスライドショー形式で過去の選択を振り返ると、「全ての選択が意味を持った」感覚を与えられます。
Chapter 6 5つのアンチパターン
ここで重要な注意点として、避けるべき5つのアンチパターンをお伝えします。
やってはいけないことですね。教えてください。
まず「ゲーティングによる選択の強要」。説得スキルが足りないから脅迫しか選べない、というのはプレイヤーの意図と乖離してしまいます。
RPGでよくありますよね。どうすればいいんですか?
スキル不足でも複数選択肢を用意し、失敗時の結果も物語の一部として設計するんです。Disco Elysiumでは赤チェック失敗が時に最良の結果を生むこともあります。
失敗も楽しめる設計ですね。他のアンチパターンは?
「ゴッチャ選択」という問題があります。「グラスを押す」を選んだら実際には「グラスを殴り割る」になってしまうようなケース。プレイヤーが選択を信用しなくなり、攻略サイトに頼るようになります。
それは裏切られた気持ちになりますね。
そして「正解選択の強要」。Mass Effect 2ではParagonかRenegadeを一貫しないと忠誠チェックに失敗するんですが、これだとプレイヤーは攻略情報を見ながらプレイしてロールプレイが死んでしまうんです。
Chapter 7 成功事例に学ぶ
最後に、成功事例から学びましょう。ウォーキング・デッドは「結末ではなく、過程と文脈に意味がある」という哲学で設計されました。
過程に意味があるってどういうことですか?
結末が大きく変わらなくても、「自分だけのリー」を形成した感覚がエンゲージメントを生むんです。選択の「結果」より「選択する瞬間の感情体験」が重要という教訓ですね。
Detroit: Become Humanはどうだったんですか?
彼らは「プレイヤーはカーテンの裏を知るべき」という哲学を持っています。各チャプター終了後にフローチャートを公開し、取れたルートと取れなかったルートを可視化しました。
分岐を隠さないんですね。それで効果はあったんですか?
驚くべきことに、プレイヤーの30%が全ての分岐を見るために複数回プレイしたんです。さらにYouTubeで「全エンディング比較」動画が大量に作られ、マーケティング効果も生まれました。
透明性がリプレイ意欲を高めるんですね。Hadesはどうですか?
Hadesは「死と繰り返しを物語の一部にする」という設計で、「ローグライトはストーリーを語れない」という常識を覆しました。死亡回数や過去の会話を追跡して、次回の対話に反映させるんです。
繰り返しプレイ自体がストーリー進行になるんですね。それは画期的だ。
Chapter 8 クロージング
さて、今日のポイントをまとめましょう。インタラクティブストーリーテリングは単なる選択肢ではなく、プレイヤーエージェンシー、つまり世界に影響を与える力の設計です。
意味のある選択設計と、分岐構造のバランスが重要でしたね。
そうです。インディーゲームでは、大半を最小分岐にして3〜5箇所のキーポイントのみ結果型分岐にするハイブリッド設計がおすすめです。
アンチパターンを避けることも大事ですよね。ゴッチャ選択とか。
はい。そしてウォーキング・デッドが教えてくれたように、選択の「結果」より「選択する瞬間の感情体験」が重要。Hadesのように繰り返しプレイを物語進行に統合することも可能です。
皆さんのゲームではどんな選択システムを使っていますか?ぜひ教えてくださいね。
それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。さようなら。
さようなら!