スクリプト
Chapter 1 オープニング
皆さんこんにちは、ゲームデザインポッドキャストへようこそ。今日は、ゲーム設計の最重要テーマ、コアループ設計についてお話しします。
タカシさん、コアループって聞いたことありますけど、具体的に何なんですか?
いい質問ですね。コアループとは、プレイヤーが繰り返し実行する中核的なゲームプレイサイクルのことです。ゲームの心臓部と言っていいでしょう。
心臓部ですか。それってそんなに重要なんですか?
実は、コアループが適切に機能していなければ、どれだけ優れたグラフィックスやストーリーを加えても、プレイヤーはゲームに没入できません。逆に、コアループが強固であれば、最小限のコンテンツでも数百時間のプレイに耐えうるんです。
Chapter 2 コアループの基本構造
では、コアループの基本構造から見ていきましょう。最もシンプルなモデルは、チャレンジ、アクション、リワードの3要素です。
チャレンジ、アクション、リワード。なんか分かりやすいですね。
そうなんです。例えば、敵が現れる、これがチャレンジ。プレイヤーが攻撃する、これがアクション。敵を倒して経験値を得る、これがリワード。そして、また次の敵が現れて繰り返します。
なるほど。でも、すべてのゲームがそんなにシンプルじゃないですよね?
その通りです。実は、成功するゲームは複数の時間スケールでループを持っています。Primary、Secondary、Tertiaryと呼ばれる多層構造なんですね。
プライマリ、セカンダリ、ターシャリー?それぞれ何が違うんですか?
Primaryは秒単位の最も頻繁な行動、移動や攻撃ですね。Secondaryは分単位、レベルクリアやボス撃破。Tertiaryは時間から日単位、スキルツリー完成や全ステージクリアです。
具体的なゲームで例えてもらえますか?
Vampire Survivorsが分かりやすいですね。Primaryは敵を倒して経験値を集める30秒周期。Secondaryは武器を最大レベルまで進化させる5分周期。Tertiaryは新キャラクターをアンロックする1プレイ周期です。
Chapter 3 設計の7原則 - シンプルさと即座のフィードバック
さて、ここからコアループ設計の7つの原則をお話ししましょう。まず1つ目は、シンプルさと明快さです。
シンプルであることが大事なんですね。
はい。面白いのは3秒ルールというものがあって、プレイヤーが最初の3秒で何をすればいいか理解できるかがポイントなんです。あと、ループを1文で説明できるかも重要です。
1文で説明できるかって、厳しいですね。
でも、それができないということは、ループが複雑すぎるということなんです。例えば、DOOM 2016のコアループは「悪魔を倒す、ヘルスオーブが出現、近接して回復」。シンプルですよね。
なるほど。2つ目の原則は何ですか?
即座のフィードバックです。プレイヤーの行動に対する反応は0.1秒以内が理想なんです。遅延は没入感を破壊してしまいます。
0.1秒って、ほとんど瞬時ですよね。
そうです。視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、触覚的フィードバックを組み合わせます。Hadesがいい例で、攻撃の瞬間に画面の軽いフラッシュ、敵の硬直、明確なヒット音が同時に起こります。
だからHadesは気持ちいいんですね。
Chapter 4 適切な頻度と有意義な選択
3つ目の原則は、適切な頻度と長さです。ループの1周期は5秒から120秒が理想なんです。
5秒から120秒って、結構幅がありますね。ジャンルで違うんですか?
まさにその通りです。アクションゲームは5秒から30秒、パズルゲームは30秒から60秒、ストラテジーゲームは60秒から180秒が目安です。
Slay the Spireみたいなカードゲームはどうなんですか?
Slay the Spireは良い設計で、1戦闘が3分から5分、1フロアが10分から15分、1ランが45分から90分になっています。セッション時間にぴったりフィットしてるんですね。
4つ目の原則は何ですか?
有意義な選択です。ループ内の選択は戦略的に重要で、結果が明確に異なるものでなければなりません。
どういう選択が有意義なんですか?
トレードオフが重要です。例えば、攻撃力プラス50パーセント、防御力マイナス30パーセント、みたいな選択。リスクとリターンがあるんですね。逆に、攻撃力プラス10パーセントと12パーセントの選択は、最適解が自明で意味がありません。
Into the Breachも選択が難しいゲームですよね。
その通りです。あのゲームは毎ターン複数の脅威が同時発生して、リソースが限られている。どの被害を許容し、どれを防ぐかの優先順位判断が核心なんです。
Chapter 5 進行の可視化とフィードバックループ
5つ目の原則は、進行の可視化です。プレイヤーは前進している実感を常に得られなければなりません。
失敗したときも前進を感じられるようにするんですか?
その通りです。Dead Cellsがいい例で、死亡時も細胞は保持されてパーマネントアップグレードができます。失敗しても何かしらの進歩を実感できるんですね。
6つ目の原則は?
ポジティブ・ネガティブフィードバックループのバランスです。これは少し複雑なんですが、重要なんです。
ポジティブとネガティブって、どう違うんですか?
ポジティブフィードバックループは、成功の増幅です。優勢な側がさらに有利になる、スノーボール効果ですね。Call of Dutyのキルストリークが典型例です。
じゃあ、ネガティブは?
ネガティブフィードバックループは、ゴム紐効果です。劣勢な側に救済措置を与えます。Mario Kartのブルーシェルが有名ですね。トップを走っているプレイヤーを狙い撃ちします。
どちらが良いんですか?
ケースバイケースです。PvEでは成長の快感を重視してポジティブループ優先、PvPでは一方的展開を防ぐためにネガティブループが必須です。Vampire Survivorsは両方を使い分けていますね。
Chapter 6 早期確立の重要性とアンチパターン
7つ目の原則は、早期の確立と反復テストです。コアループは開発初期に固めて、7回以上のイテレーションを経て洗練させるべきなんです。
7回以上って、結構多いですね。
でも、それだけ重要だということです。5分ルールというのもあって、5分プレイしてもう1回と思わせられるかを検証します。グラフィックなしの仮モデルで十分です。
逆に、やってはいけないことって何ですか?
アンチパターンですね。1つ目は、コアループの不在です。バラバラな要素の寄せ集めで、中心となる繰り返し体験がない状態です。
失敗例とかあるんですか?
Anthemという大作ゲームがそうでした。射撃、飛行、ルート収集、基地建設など多要素があったんですが、どれが核か不明確で、開発チームも最後まで決められなかったと言われています。
他にも避けるべきことはありますか?
ループの冗長化です。1周期が5分以上かかると、待ち時間や無意味な作業が多くなります。ループ外の時間、移動やロード、UI操作を全体の20パーセント以下に抑えるべきです。
20パーセント以下ですか。結構厳しいですね。
でも、それがプレイヤーを飽きさせないための基準なんです。あと、コンテンツへの依存も危険です。ループの弱さをコンテンツ量で補おうとするのは、永遠に追いつけないコンテンツ・トレッドミルになります。
Chapter 7 実践チェックリスト
タカシさん、実際に作るときのチェックリストみたいなものはあるんですか?
はい、あります。プロトタイプ段階では、ループを1文で説明できるか、グレイボックスで5分プレイしてもう1回と思えるか、7回以上のイテレーションを経ているかを確認します。
メカニクス段階では?
すべてのアクションに0.5秒以内のフィードバックがあるか、ループ1周期が5秒から120秒に収まっているか、3つ以上の有意義な選択肢があるかを確認します。
進行設計段階は?
Primary、Secondary、Tertiaryループが明確に区別されているか、失敗時も何らかの進行があるか、短期目標が常に存在するかをチェックします。
最後のポリッシュ段階では?
フィードバックループが意図通り機能しているか、ループ外の時間が全体の20パーセント以下か、100回繰り返しても飽きないバリエーションがあるか、新規プレイヤーが3分以内にループを理解できるかを確認します。
Chapter 8 クロージング
さて、今日のポイントをまとめましょう。コアループはゲームの心臓部で、シンプルで強固なループが最強です。
Simple is Bestってことですね。
その通りです。複雑さは深さではありません。あと、早期にプロトタイプを作って7回以上改善すること、論理的に正しいよりプレイして気持ちいいことが重要です。
プレイヤーは前進を実感できなければ去る、というのも印象的でした。
はい。最後に覚えておいてほしいのは、コアファースト、コンテンツレイター。ループが弱いままコンテンツを追加しても無駄なんです。まずループを完璧にし、その後に世界観やストーリーを肉付けする順序を守ることです。
今日は本当に勉強になりました。リスナーの皆さんも、自分の好きなゲームのコアループを考えてみると面白いかもしれませんね。
それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。さようなら。
さようなら!